登山でテント泊をする場合、必要になるのが、シュラフ(寝袋)です。
テント泊でなくても避難小屋に泊まる場合も、
やはり寝具がないのでシュラフが必要になります。
本記事では、テント泊登山などでの快適な睡眠に不可欠なシュラフの選び方について解説していきます。
テント泊登山初心者におすすめのシュラフについてはこちらの記事で紹介していますので、あわせてお読みください。
<本記事の信頼性>
・筆者は登山歴9年。
・日本百名山をガイドやツアーなしで80座登った実績があります。
・背伸びをしない分かりやすい文章を心がけています。
登山用シュラフの選び方の2つのポイント
登山で使用するシュラフについて調べると、実に多くの商品があるので、迷ってしまうと思います。
これは大丈夫だと思いますが、大前提として、登山で使用するシュラフは、オートキャンプ用のものではなく、登山用のシュラフを使用してくださいね。
オートキャンプをやったことがない人は分からないかもしれませんが、オートキャンプ用のシュラフはとにかく大きくて重たいです。
登山に持って行くの不可能です。
ですので、必ず登山用のシュラフを選ぶ様にしてください。
登山用シュラフを選ぶ際のポイントは、2つあります。
ダウンか化繊かというのは、シュラフの中身の話です。
ジャケットのことを思い浮かべると分かりやすいですよね。
ダウンジャケットは軽くてしかもコンパクトに収納できますよね。
ダウンじゃないジャケットはたたんでも小さくなりませんよね。
一方、対応温度というのは、そのシュラフが使用可能な温度のことです。
どういう状況でシュラフを使用するかによって、選ぶシュラフは違ってきます。
コートに例えると分かりやすいですよね。
春先の少し肌寒いくらいの季節であれば、薄手のスプリングコートなんかを着る人が多いと思います。
一方、氷点下○○度なんていう極寒の場合は、エスキモーの様な分厚くて大きなコートを着ますよね。
シュラフの場合もこれと同じです。
寒くなるところで寝ることがないなら、軽くて薄いシュラフを選べばいいですし、氷点下になる様な寒いところでも寝ることがあるのであれば、重くて分厚いシュラフを選ぶといった感じです。
では、ダウンと化繊の違いと対応温度について、次の項目から順に解説していきます。
ダウンと化繊の違いついて
登山用シュラフには、中身がダウンのものと化学繊維のものの2種類あります。
まずそれぞれメリットとデメリットについて触れておきます。
どちらも一長一短ありますが、ダウンタイプのもので3シーズン対応のものを購入しておけば基本的に後悔はしないでしょう。
ダウンのメリットは、
何といっても「軽くてコンパクトに収納ができる」点です。
例えばですが、
モンベルから出ている
「夏の3,000m級の山から冬の2,000m級の山まで対応」
しているシュラフを比べてみます。
<ダウン>
商品名:ダウンハガー 650 ♯1
重量:1,220g
収納サイズ:19×38cm(9.5L)
価格:¥33,000 +税
<化繊>
商品名:バロウバック ♯1
重量:1,781g
収納サイズ:21.8×43cm(13L)
価格:¥19,500 +税
重量はダウンの方が561g軽く、
収納サイズはダウンの方が3.5L小さくなります。
もう少し具体的に言うと、
ダウンの方が500mlのペットボトル1本分ほど軽く
2ℓのペットボトル2本分くらいの収納スペースを減らすことができます。
シュラフを登山に持って行くのはテント泊の場合がほとんどでしょうから、これだけ重量も収納スペースを減らすことができるなら、ダウンが断然いいと思いませんか?
とはいえ、シュラフも安い買い物ではないので、価格も気になるところだと思います。
上記のモンベルの商品の価格差は、13,500円です。
ダウンの価格は、化繊のおよそ1.7倍です。
結構差がありますよね😅
悩んでしまいますが、結局は買う人の考え方次第ということになります。
どんな商品を買う場合も同じことが言えますが、
「とにかく価格の安さを重視するのか」
それとも
「快適性や耐久性、満足度を重視しするのか」
ということです。
安さを重視すると、快適性や耐久性、満足度は劣ります。
シュラフの場合でも同じことがいえます。
ダウンのシュラフを選ぶと、化繊のものよりも寝心地がいい(快適性)し、商品が劣化しにくく何年も使える(耐久性)ので、当然満足度も高くなります。
ダウンか化繊かをどうしても決められないという人は、
こんな感じで決めるのもひとつの手です。
ぜひ参考にしてみてください。
補足ですが、ダウンにはフィルパワー(FP)という指標があります。
これはダウンの反発力を表す数値です。
この数字が高いほど反発力が強くなります。
FPが高いほどダウンがふっくらするので、保温性が高まります。
つまり高性能になるので、価格も高くなります。
高価格帯のものでは800FPというのもありますが、
実際は650FPあたりのものでも十分に高性能です。
ダウンのシュラフを購入する場合、
650FPあたりを基準に選べば特に問題ありません。
対応温度について
シュラフの中身の素材の違いについては分かったと思いますので、
次は対応温度について説明していきます。
登山用シュラフの対応温度は基本的に以下の表記になります。
ちなみにモンベルのホームページでは、
対応温度について以下の様な図で説明されています。
ちなみに「エクストリーム」という項目がありますが、これは無視していいです。
参考にはなりませんので。
一番参考になるのは、コンフォート(快適使用温度)という指標です。
これは一般的に寒さに弱い人でもシュラフの中に入っていれば快適に睡眠が取れる温度のことです。
女性など寒さに弱い人は、コンフォート(快適使用温度)の指標を参考にシュラフを選ぶといいということです。
そしてもうひとつの指標が、リミット(下限温度)です。
これは一般的に寒さに強い人がシュラフの中に入っていれば、寒さを感じずに睡眠が取れる温度のことです。
暑がりの人や男性の場合は、リミット(下限温度)の指標を参考にするといいです。
とはいえ、暑い場合は着ているものを脱いだりシュラフから出たりすればある程度対応できますが、極端に寒い場合は、いくら着込んでも寒さに耐えられない場合が多々あります。
なので、登山用のシュラフを選ぶ場合、リミット(下限温度)よりもコンフォート(快適使用温度)を基準にした方が、より安全といえます。
では、実際対応温度が何度くらいのものを選べばいいのでしょうか?
体質や使用する場所によって個人差があるので、一概には言えませんが、
以下の基準で選ぶのがおすすめです。
なぜこの基準にしたのか。
この対応温度で使用する人が一番多いと想定するからです。
つまり、テント泊をする人のほとんどはこんな感じだからです。
・夏山から秋山までは必ず、できれば冬山も挑戦したい
・2,000m級はもちろん3,000m級の山でもテント泊をしたい
夏山で快適使用温度がマイナス5度だと、暑すぎると思うかもしれませんが、暑ければシュラフに入らなければいいだけの話です。
別にシュラフを敷き布団にしてもいいのです。
シュラフのチャックを閉めないで寝るとか方法はいくらでもあります。
暑い場合の対処方法はこれで大丈夫ですよね?
それよりも重要なのは、寒い場合に対応できるかどうかです。
夏山をやる人は基本的に秋の紅葉登山も好んでやります。
例えば、9月下旬から10月初旬に最盛期となる北アルプスの涸沢の紅葉を見に行く登山の場合。
朝は氷点下まで気温が下がり、テントの表面が凍結することは決して珍しくありません。
しかもテントの下は岩です。
いくらテントマットやスリーピングマットを敷いたとしても、
やっぱり正直、寒いです😅
頼りになるのは、シュラフだけです。
秋の北アルプスの紅葉を見に行くためにテント泊をするのなら、氷点下まで対応のシュラフを選ぶのが絶対におすすめです。
秋の北アルプスでのテント泊ができると、そのうちに2,000m程度の冬山でもテント泊をしたいと思うはずです。
場所や気象条件にもよりますが、条件が整えば、コンフォート(快適使用温度):マイナス5度、リミット(下限温度):マイナス10度のシュラフは結構使えます。
実際、僕は厳冬期の雲取山の避難小屋で、同程度のシュラフで寝泊りをした経験があります。
朝に小屋の温度計を見たらマイナス15度でしたが、途中で寒さで起きることもなく快適に眠ることができました。
もちろんフリースもダウンジャケットも着込んで寝ましたが。
繰り返しになりますが、おすすめの対応温度は以下のとおりです。
参考にしてみてください。
お手入れや保管方法について
これまでの説明で登山用シュラフの選び方のポイントが理解できたと思います。
では実際に買って使用し始めた後のシュラフのお手入れ方法や保管方法について簡単に説明しておきます。
まず、登山から帰ってきたら、シュラフを乾燥させてください。
雨などに濡れていなくても、寝ている時の汗やテント内の結露などで、知らない間にシュラフには湿気がたまっています。
そのまま放置してしまうと、カビの原因になります。
「家に着いたらとにかく早めに乾燥させる」
ということを頭に入れておいてください。
またダウンは湿っていると、反発力が弱くなります。
反発力が弱いとふかふか感がなくなります。
なので、乾燥させてふかふか感を復活させてあげましょう。
あと、長期間使用しない時は、なるべく定期的にシュラフを収納袋から出してあげましょう。
コレは結構重要なことです。
シュラフは本来広がった状態でいるものですが、人間の都合により収納袋に入れられています。
しかもかなり圧迫された状態でです。
特にダウンの場合、長期間圧縮された状態が続くと癖がついてしまってダウンの反発力が弱まってしまいます。
ダウンシュラフの利点である「ふかふかの感触」と「保温力」が損なわれてしまいますので、ぜひ定期的に収納袋からシュラフを出し深呼吸をさせてあげてください。
そうすることで、シュラフも長持ちしますので。
コンプレッションバックのすすめ
次にシュラフの収納にあると便利なコンプレッションバックについて簡単に触れておきます。
見たことがない人は分からないかもしれませんが、シュラフって思った以上に大きいです。
もちろん収納袋に入った状態での話です。
テント泊登山の場合、持ち物はどうしても多くなるので、少しでもザックの中のスペースを有効活用したいですよね。
そこであると便利なのが、コンプレッションバックです。
スタッフバックに収納したシュラフをベルトを引っ張ることで圧縮できる優れものです。
圧縮するとなんと容量が半分ほどまで減らすことができます。
限られたスペースしかないザックの中を広く使える様になりますので、おすすめです。
コンプレッションバックは主に2種類のタイプが用意されています。
モンベルから出ているものは、コンプレッションキャップというもの。
スタッフバック付属しておらず、圧縮するためのカバーだけが販売されています。
もう一つはスタッフバックと圧縮するためのカバーが一体になっているものです。
イスカから発売されているものが、有名です。
イスカの商品はスタッフバックの素材が防水加工を施してあります。
イスカのコンプレッションバックを買うと純正の収納袋は不要になります。
「収納」と「圧縮」が同時にできるので、とても便利です。
ぜひシュラフとセットでの購入を。
あると便利なインナーシーツ
最後はインナーシーツについてです。
シュラフの中に入れる薄いシュラフの様なものです。
シュラフinシュラフみたいな感覚です。
別になくても困りませんが、あると便利なものです。
本来は保温効果を高める商品ですが、違う視点で説明します。
登山で汗を掻くと体がベタベタしてくるので、そんな体でシュラフの中に入るとあまり気持ちのいいものではありません。
そこでフリースの様な肌触りのいいインナーシーツをシュラフの中に入れてあげると、このベタベタ感が改善されます。
また夏場で標高の低いところでテント泊をする場合はシュラフの中に入ると暑くて寝られないこともあります。
こんな時はインナーシーツを単体で使うととても便利です。
薄いシュラフとして使うことができます。
また山小屋泊の際に布団の中に入れてしまえば、直接布団に体が触れることもなくなるので、清潔です。
それと、軽くてとてもコンパクトな点もポイントが高いです。
シュラフカバーと違い、インナーシーツは4,000円程度と比較的安価なので、シュラフと合わせて購入してもいいアイテムです。
まとめ
いかがでしたか。
登山用シュラフの選び方について解説してきました。
シュラフを選ぶ際のポイントは2つありました。
①ダウンなのか化繊なのか
②対応温度
シュラフの中身の素材は、ダウンと化繊の2種類がありました。
予算などの制限をクリアできるのなら、できるだけダウンのシュラフを購入することをおすすめします。
対応温度については、コンフォート(快適使用温度)とリミット(下限温度)という指標があり、それぞれマイナス5度とマイナス10度を基準に選ぶのがおすすめでした。
あとシュラフの収納に便利なコンプレッションバックやあると何かと便利なインナーシーツについても解説しました。
シュラフと合わせて購入することをおすすめします。
ではみなさんも自分に合ったお気に入りのシュラフを見つけて、快適なテント泊を楽しんでくださいね!!
今回は以上です。
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