登山を始めた人なら槍ヶ岳を知らない人はいないと思います。
富士山の次くらいに有名な山なのではないでしょうか。
せっかく登山を始めたので、いつかは登ってみたい憧れの山だと考えている人は多いですよね。
槍ヶ岳についてはガイドブックや雑誌での紹介、インターネットでの情報があふれているので、今回は槍ヶ岳に登るのに基本的でかつおすすめの槍沢コースについて僕なりの視点で解説していきます。
<本記事の信頼性>
・筆者は登山歴9年。
・日本百名山をガイドやツアーなしで80座登った実績があります。
・背伸びをしない分かりやすい文章を心がけています。
槍ヶ岳が初めてなら沢コースがおすすめ
まず最初に槍ヶ岳に登るルートについて触れておきます。
槍ヶ岳に登るルートは6つあります。
そのうち槍ヶ岳から四方に伸びる尾根を登るルートがあり、それは以下のとおりです。
東鎌尾根ルートは、燕岳や西岳からのいわゆる表銀座縦走ルートから続いているルートです。ハシゴが何箇所かある程度で難易度は高くありませんが、尾根の下を歩く「槍沢ルート」がメジャーなルートとなります。
大キレットルートは、北穂高岳から槍ヶ岳までの稜線をつなぐ難所です。両サイド1,000m以上切れ落ちた崖っぷちを鎖場なしで歩く難ルートです。経験値の高いベテラン登山者が歩くバリエーションルートです。
西鎌尾根ルートは、新穂高温泉から入山していったん双六小屋まで回り、そこから西鎌尾根を歩いて槍ヶ岳を目指すルートです。難所はありませんが、距離が長くなります。新穂高温泉から入山する場合は、「飛騨沢ルート」から登るのがおすすめです。
北鎌尾根ルートは、槍ヶ岳へ向かう最難関ルートとなります。槍沢ルートの途中からいったん東鎌尾根まで登ってまた下り、槍ヶ岳の北へ伸びる北鎌尾根へ登るルートです。東鎌尾根を越えると標識や整備された登山道はありません。地図にも登山ルートの記載がない難ルートです。槍ヶ岳を知り尽くしたベテランのみが立ち入ることができる領域です。
このように槍ヶ岳の穂先からは、きれいに4方向に尾根が伸びています。
ただし、難ルートであったり、長距離ルートであったりするので、初めて槍ヶ岳に登る人にはおすすめしません。
おすすめは、沢ルートです。
尾根と尾根の間の谷間(沢)を登るルートです。
具体的には、「槍沢ルート」と「飛騨沢ルート」の2つです。
そしてそれぞれのルートへ入る入り口は違います。
「槍沢ルート」へは上高地から入り、「飛騨沢ルート」へは新穂高温泉から入ることになります。
それでは次に上高地と新穂高温泉へのアクセスについて解説していきます。
槍ヶ岳の入り口は上高地か新穂高温泉
上記のとおり槍ヶ岳に登るルートはたくさんありますが、一般的なコースの入り口は限られています。
槍ヶ岳への一般的なコースの入り口は、「上高地」と「新穂高温泉」の2つです。
表銀座縦走コースは別の入り口になりますが、こちらは応用編と考えてください。
基本は上高地か新穂高温泉です。
そしてさらに言えば、上高地から入山して登る方がより簡単に登ることができます。
上高地へ行く方が、駐車場を確保しやすいですし、バスの本数も圧倒的に多いからです。
<上高地へのアクセス>
・公共交通機関
JR松本駅→路線バスで1時間半で上高地
・マイカー
長野自動車道松本ICから32km約45分で沢渡駐車場
→シャトルバスまたはタクシー約30分で上高地
※他にも各地から上高地への直行バスもあります。
<新穂高温泉へのアクセス>
・公共交通機関
JR松本駅から定期バス2時間10分で新穂高
JR高山駅から定期バス1時間40分で新穂高
・マイカー
(関東・甲信方面から)
長野自動車道松本ICから90分
(中部・関西方面から)
東海北陸自動車道飛騨清見IC経由、
→中部縦貫道高山ICから70分
※他にも各地から新穂高温泉への直行バスもあります。
釜トンネルの先から上高地までは、通年マイカー規制となっています。
車で行く場合、上高地行きシャトルバスのバスターミナル付近の駐車場に停める必要があります。
岐阜県側には「あかんだな駐車場」が、長野県側には「沢渡駐車場」があり、どちらも大規模な駐車場になっています。
またバスは朝にならないと走り始めないので、上高地から行く場合は夜明けとともに登山開始ということができません。
逆に新穂高温泉の場合は、24時間車で出入りすることが可能ですので、いつでも登山を開始することができます。
ただし新穂高温泉の方は深刻な駐車場の問題がありますので、少し調べてから行った方がいいです。
シーズン中は登山口に近い駐車場は常に満車なので、登山口から遠い「鍋平園地」というところに駐車することになろうかと思います。
その意味では上高地から入山する方が気分的には楽かもしれませんね。
では、おすすめの槍沢コースの解説をしていきますね。
槍沢コースについて(おすすめ)
槍沢コースは、上高地から入る最も基本的なコースです。
槍ヶ岳へは槍沢コースから登る人が一番多いのも特徴です。
なんと言っても「大きな山小屋が多い」のが槍沢コースの魅力です。
明神館、徳澤園と徳沢ロッヂ、横尾山荘、槍沢ロッジ、殺生ヒュッテ、ヒュッテ大槍。
山頂直下の槍ヶ岳山荘に着くまでにこれだけの山小屋があるんです。
しかも多くの小屋はテント場も併設しています。
山小屋泊でもテント泊でも登りやすいのはいいですよね。
これだけ山小屋が多いとスケジュールも柔軟に立てやすくなりますし、いざという時の駆け込み場所も多いので、槍沢コースは初めて槍ヶ岳に登るという人にはおすすめです。
上高地〜明神
上高地バスターミナルに降り立つと5分ほどで有名な観光スポットの河童橋に到着です。
河童橋から5分で小梨平キャンプ場に到着です。
いきなり余談ですが、小梨平キャンプ場は景色よし、設備よし、人よし、の最高のキャンプ場です。
登山をしなくてもここでテント泊をするだけでも行く価値のある所ですので、気になる方はテントを張りに行ってみてください。売店の品揃えやレンタル品も充実していますので、とっても快適ですよ。
ちなみにテントがなくてもケビンにも泊まれます(要予約)。
小梨平キャンプ場についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、よかったらどうぞ。
話がそれたので戻ります😅
小梨平キャンプ場を過ぎて1時間ほど歩くと「明神」です。
旅館と山小屋の中間のような「明神館」があります。
ここで寄り道をして梓川の方に行くと穂高神社があります。
ついでに参拝するのもいいかもです。
明神〜徳沢
明神を過ぎてさらに1時間ほど歩くと、「徳沢」に到着です。
徳沢には「徳澤園」と「徳沢ロッヂ」の二つの山小屋があります。
明神館と同じく、こちらも旅館やホテルに近い山小屋になります。
徳沢にはキャンプ場もあります。
ここにテントを張って、テント泊と小屋泊を組み合わせるハイブリッド型登山もおすすめです。
僕が初めて槍ヶ岳に登った時は、ここにまずテントを張って一日目は槍沢ロッジに泊まり、二日目は槍ヶ岳に登って徳沢まで帰ってきてテント泊。三日目はテントを撤収して帰るだけ、というスタイルで登りました。
槍ヶ岳に登る場合、基本的に2泊は必要になると考えてください。
連泊の場合、テント泊を組み入れると宿泊代を抑えられるので、おすすめですよ。
徳澤園では名物のソフトクリームを食べてから歩き出しましょう。
徳沢〜横尾
徳沢を過ぎてさらに1時間ほど歩くと、「横尾」に到着です。
横尾山荘があるので、休憩にちょうどいいです。
横尾には横尾山荘とキャンプ場があります。
ここのキャンプ場も意外と利用価値が高いです。
僕は奥穂高岳に登るときに横尾を拠点にしました。
一日目は横尾キャンプ場でテント泊をし、二日目に奥穂高岳をピストンしてまたテント泊。三日目にテントを撤収して帰るといった感じです。
激混み必至の涸沢の小屋を避ける方法としては、かなりオススメです。
おっと、、、
また話がそれました😅
横尾は涸沢と槍ヶ岳の分岐点です。
来た道をまっすぐ進めば槍ヶ岳、左に曲がって横尾大橋を渡って梓川を越えていけば涸沢方面に行けます。
横尾〜槍沢ロッジ
横尾を過ぎると、ここから初めて槍ヶ岳登山が始まるといった感じになります。
上高地から横尾までは、梓川沿いのただただ平坦な林道をひたすら歩くといった感じで、登山というよりはアプローチの感覚が強いかもしれません。
それが横尾を過ぎると少しずつ登山道っぽくなってきます。
相変わらず横には梓川が流れていますが、流れが次第に激しくなってきます。
沢の音が大きくなってきて、登山気分が高揚してきます。
沢に転がっている岩の色も赤みを帯びてきて、山っぽくなってきます。
上高地から歩いてくるとなかなか槍ヶ岳の姿が見えないのですが、横尾から50分ほど歩くとふと槍の穂先が見える「槍見河原」というポイントに着きます。
実はまだまだ先は長いのですが、少しでも槍ヶ岳の姿が見えると、かなりテンションが上がります!!
あぁ、自分は今槍ヶ岳に登っているんだと。
長い道のりなので、こういった自分への励ましが大切になりますよ。
槍見河原を過ぎるとすぐに一ノ俣、二ノ俣と続いて橋を渡ります。
二ノ俣を過ぎると少しずつ登り始めます。
30分ほど登ると「槍沢ロッジ」に到着です。
山小屋泊の人はこの槍沢ロッジで宿泊します。テント泊の人はここで受付をしてさらに数十分登った先にあるババ平キャプ場にテントを張りましょう。
槍沢ロッジの前には小屋の人が望遠鏡を設置してくれています。
天気がいいと槍ヶ岳山頂付近を見ることができます。
また一歩槍ヶ岳に近づいてテンションが上がりますよね!
槍沢ロッジ〜槍ヶ岳山荘
さて槍沢ロッジを出発するとババ平キャンプ場まではゆるやかに登っていきます。
ババ平からはまた平坦な沢沿いの道になり、1時間ほど歩くと「大曲」に到着です。
大曲から水俣乗越方面へ登っていくと、先ほどご紹介した東鎌尾根の稜線に出ることができます。
槍沢コースは道なりに進みます。
大曲を過ぎるとやっと槍ヶ岳へ向かって高度を上げていく感じになります。
上高地から6時間半ほど歩いてやっとです。
長いですよね😅
焦らず一歩一歩ですよ!
ここからのルートで気にかけたいのが、雪のことです。
雪の多かった年だと、7月頃までは大きな雪渓が残っていることが多いので、注意です。
場合によっては軽アイゼンが必要になりますので、事前にルートの状況の情報を収集しておきましょう。
大曲から1時間ほど登ると「天狗原分岐」に到着です。
ここを左に折れると、秋に紅葉の槍ヶ岳の写真スポットになる天狗池へと通じます。
ここは道なりに進みます。
さらに1時間ほど登っていくと「グリーンバンド」と呼ばれるハイマツ帯に出ます。
ちょっとした広場になっているので、休憩ポイントとしておすすめです。
また、グリーンバンドに着くとやっと三角形の槍ヶ岳がドーン!と目に飛び込んできます。
槍ヶ岳に登るといつもテンションMAXになる瞬間です。
途中でツライなと思ったら、
「グリーンバンドまで行けば槍ヶ岳が見えるんだ」
と自分を励ましてあげましょう。
グリーンバンドを過ぎると、あとはひたすら岩の階段を登っていく感じです。
途中「坊主の岩小屋」や「殺生ヒュッテ」をやり過ごし、ひたすら登っていきます。
ずっと槍の穂先は見えるのになかなか着かない、というの正直なところですが、ここは踏ん張りどころです。
休憩を取りつつ確実に進んでいきましょう。
槍沢ロッジを出発してから、約6時間。
ついに「槍ヶ岳山荘」に到着です。
槍の肩から槍ヶ岳山頂に登る
ここまで来たら、あとは山頂の穂先に登るだけです。
槍ヶ岳山荘まで来ると槍の穂先は本当に近いです。
片道30分です。
鎖と垂直のハシゴがあるので、初めてだと少し身構えてしまいますが、安心してください。
実際に登ると、ジャングルジムに登るような感覚です。
槍ヶ岳に登るまで登山を続けてきた人なら、決して難しくはありません。
足場はしっかりしているし、順路に沿って目印もつけてくれています。
三点支持の基礎ができていれば、問題はありません。
最後の垂直のハシゴを登り切れば、槍ヶ岳山頂に到着です。
お疲れ様でした😄
山頂からの景色は最高です。
360度の大パノラマです。
北アルプスの山々はもちろんのこと、天気がよければ富士山も見えるかもしれません。
ただし、長居は無用です。
槍の穂先は思ったとおり、狭いです。
人が10人も集まれば、手狭になります。
登って来る人が多い時は、なるべく早く下山するようにしましょう。
渋滞を避けよう
最後に重要なことをひとつお伝えします。
槍ヶ岳も北アルプス屈指の人気の山です。
なので登山者は非常に多いです。
大型連休の時などは、どこかのテーマパーク並みの大行列となります。
以前9月の3連休に登った時、槍ヶ岳山荘の玄関からず〜っと長い列ができていたことがありました。
確か午前10時30分頃でした。
小屋の人に聞くと、「5時間くらいは覚悟が必要」とのことでした。
せっかくここまで来たのにやり切れない気持ちでいっぱいでしたが、その日のうちに麓まで下りないと行けなかったため、登頂を断念しました。
こんなことにならないためにも、皆さんには渋滞を避けるポイントを予め知っておいて欲しいと思います。
早朝と夕方は比較的空いているようです。
早朝も夕方も山頂付近の小屋に泊まらないと物理的にそこにいることができません。
つまり登る人の数が限られているということです。
僕が失敗した午前10時30分頃というのは、槍沢ロッジを夜明けとともに出発した人がちょうど槍ヶ岳山荘に着く時間です。
また飛騨沢コースから登ってきた人も多くこの時間に集まるはずです。
つまり1日で最も混む時間帯です。
なので、槍ヶ岳山荘や殺生ヒュッテなど山頂付近に泊まるなどして、早朝または夕方に山頂にアタックできるようにスケジュールを組むことをおすすめします。
あと、大型連休は避けた方がいいです。
僕は大型連休のしかも一番混む時間帯に槍の肩に着いて失敗しました。
可能であれば、平日に一日有給休暇をつけるなどして、一般の人と一日でもずらして登ることをおすすめします。
とはいえ、なかなか有給を取るのも実際は難しいかと思います。
なので、早朝や夕方に登れるようにスケジュールを組むということができれば、とりあえずは大丈夫かと思います。
まとめ
いかがでしたか?
今回は槍ヶ岳の槍沢コースについての具体的な解説記事を書いてみました。
交通の便がいいこととルート上に危険箇所がないことから上高地から入る槍沢コースをおすすめルートとしてご紹介しました。
槍ヶ岳へのルートはどのコースから行っても長いですが、規模の大きい山小屋が多くスケジュールを柔軟に立てやすいことからも槍沢コースがおすすめでしたよね。
槍ヶ岳へはとにかく長い行程になるので、とにかく自分を励ましながらゆっくりと確実に歩を進めることが大切でした。
あと、せっかく苦労して歩いてきたのに登頂に失敗しないように、早朝や夕方に登った方がいいというお話も最後にしておきました。
槍ヶ岳は、天気さえ恵まれれば、地道に登山をしてきた人なら誰でも登れる山だと思います。
今年こそ槍ヶ岳に登ってみませんか!
<ガイドツアーのすすめ> 自分だけでは槍ヶ岳に登るのが自信がないという人は、登山ガイドツアーをうまく利用しましょう。 ガイドツアーは天候に柔軟に対応できないなどのデメリットはありますが、現地までの交通手段や山小屋などの手配をしてくれます。 また登山中のペース配分の維持をしてくれたり難所などでのアドバイスをもらえたりしてメリットはかなり大きいです。 クラブツーリズムは登山ガイドツアーを豊富に取り揃えています。 クラブツーリズムのガイドツアーから探す リンク先から「山旅・スポーツ」→「日本百名山特集」とクリックしていくと百名山の一覧が出てきて、お好みのツアーを探すことができます。
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