日本の山の一般登山道で最難関といわれる剣岳。
こんな風に表現されるので、剣岳は自分には縁がない山だと考えていませんか?
僕も最初はそう考えていました。
でも普段山でトレーニングをしたり、基本的な装備も持っていて、あとは気象条件さえ恵まれれば、決して難しい山ではありません。
これまでの登山で積み上げてきた基本的なことを確実に実践していけば、僕でもガイドなしで登ることができました。
では、具体的に剣岳にはどのように登ればいいのかを説明していきます。
<本記事の信頼性>
・筆者は登山歴9年。
・日本百名山をガイドやツアーなしで80座登った実績があります。
・背伸びをしない分かりやすい文章を心がけています。
剣岳に登るのに必要な装備について
まず最初は剣岳に登るのに必要な装備について簡単に触れておきます。
えっ、簡単に触れるだけで大丈夫なの?
という声が聞こえてきそうですが、
大丈夫です。
シンプルに考えましょう。
一般的な装備に加えて、必要になるのはヘルメットです。
剣岳に登頂するには、ルートの後半からは急峻な岩場を登って行かなくてはいけません。
途中、難所となる「カニのたてばい」では、ほぼ垂直の岩壁をよじ登ります。
こんな所で頭上から落石があったら、とても危険ですよね。
命を守るために、必ずヘルメットを被りましょう。
また岩が多いということは、登っている時に岩に頭をぶつけやすいということも考えられます。
ケガ予防にもヘルメットは有効です。
そしてもうひとつ。
ヘルメットと一緒に持っていきたいのが、ハーネスです。
ロッククライミングをやる時にザイル(命綱)をつけるために履くアレです。
剣岳に登る場合ザイルはつけませんが、岩場につけられた鎖にハーネスから伸びたカラビナを引っ掛けて使います。
そうすると万が一岩場から落ちそうになった時でも鎖と体がつながっているので、転落しないというわけです。
初めて剣岳に登ろうとしている人の中には、ハーネスを持っていくかどうかで悩んでいる人がとても多いです。
結論からいうと、ハーネスがないと登れないわけではありませんが、迷っているなら持っていった方が断然いいです。
迷っている人は今ひとつ岩登りに自信がない人が多いようです。
でもそういう状態で登ると、頭の中が不安でいっぱいになります。
恐る恐る登っていると、登山者の多い剣岳では渋滞を作ってしまいます。
しかも、後ろから多くの人に待たれると、プレッシャーもかなりのものになります。
こんな時にハーネスがあれば、心に余裕ができますよね。
もし足を踏み外しても転落しないんですから。
もしハーネスを持っていくか迷っているなら、迷わず持っていきましょう。
カラビナとセットで1万円ほどで買えます。
心の余裕と保険と考えれれば、決して高くないはずですよ。
初めて剣岳に登るなら別山尾根ルートがおすすめ
次はルートの説明です。
剣岳に登るためのルートは、一般的に早月尾根ルートと別山尾根ルートがあります。
早月尾根ルートは標高差2,200m超のハードなルートです。
一般的な登山で標高差2,000mを超えることってまずないですよね。
しかもルート後半は、やはり「カニのハサミ」と呼ばれる岩場の難所があります。
なので、健脚な人や上級者向きのコースといえます。
剣岳に初めて登るなら、やはり別山尾根ルートを登るのがおすすめとなります。
別山尾根で登る場合は、山小屋が2つありますし、テント場も一ヶ所ありますので、身軽な状態で剣岳の山頂にアタックできます。
どうしても早月尾根から登りたいというこだわりがないのなら、素直に別山尾根から登りましょう。
別山尾根ルートのキモは、やはり「カニのたてばい」と「カニのよこばい」です。
ほぼ垂直の岩壁をわずかな足場を頼りに登り、そして降ります。
まさに足を踏み外したらthe endという難所です。
でも、ここは先ほどお話ししたハーネスを使えば、それほど怖くはありません。
鎖にカラビナをずっとつける必要はありません。
ここは危険、怖いなと思う所だけカラビナを鎖にかけると、効率よく進むことができますよ。
お金がもったいないとか思ったり、自分はハーネスなんてなくても平気だとかいって強がらないでくださいね。
少しでも安全に楽しく登った方がいいに決まってますので。
繰り返しになりますが、
迷うくらいならハーネスを買って持っていきましょうね。
別山尾根の細かい解説はググればいっぱい出てきますので、省きますが、最後に注意点をひとつ。
下りの前剣での滑落事故が多いことです。
難所の「カニのたてばい」と「カニのよこばい」では意外と滑落が少ないそうです。
もともと難所として意識するので、集中しているからです。
下りの「カニのよこばい」を終えて前剣まで戻ってくると、どうしてもホッとして集中力が落ちるので、注意です。
死にたくないなら、最後まで丁寧に慎重に行きましょう。
下りの前剣で気を抜くな、と覚えておきましょう。
おすすめの時期について
次は剣岳に登るのにおすすめの時期について説明します。
おすすめは、8月中旬から9月中旬頃までです。
特に狙い目は、お盆を少しずらして3連休にして登るといいですよ。
実際、僕はお盆休みの先頭に1日有給休暇をつけて、多くの登山者よりも1日早く入山して、渋滞もなく快適に登ることができました。
夏山は7月くらいからじゃないの?
という声が聞こえてきそうですが、剣岳が初めての人にはあまりおすすめしません。
梅雨明け後10日間や海の日も良さそうな気がしますが、そのころはまだ登山道に雪が残っていることがあります。
もちろんアイゼンが必要になります。
もしアイゼンを忘れると、撤退を余儀なくされます。
より安全に確実に登りたいなら、8月に入ってからの方がいいでしょう。
剣岳に確実に登るための山行プラン
次に剣岳に確実に登るための山行プランについて説明しますね。
剣岳に登る場合、多くの人は山小屋またはテントで泊まることになります。
体力のある人なら一泊で行けるかもしれませんが、僕は2泊することをおすすめします。
具体的にはこうです。
別山尾根ルートで登ることが前提です。
雷鳥沢キャンプ場にテントを張り、テントには泊まらず剣山荘まで行って一泊。翌日に剣岳をピストンし、雷鳥沢まで戻ってテント泊。3日目に帰路につく。
もしくは、
一泊目は剣山荘まで行って泊まり、翌日は剣岳をピストンして剣澤小屋に泊まる。3日目に帰路につく。
前者は、山小屋泊とテント泊のハイブリッドです。
せっかく立山に行くんだからテント泊はしたい、でも剣沢までテントを担ぐのは正直しんどい、というのが本音じゃないですか😅
そんな人はテントは雷鳥沢に張っておいて、帰る途中にテント泊をしましょう。
2日目の行程は少しキツいですが、最終日がかなり楽になります。
僕が剣岳に登った時は、このハイブリッド型のプランで行きました。
一方、テントを持ってない人や荷物が少なくて済む小屋泊だけでいいという人は、後者の方でいいかと思います。
1日目は別山尾根の入り口に近い剣山荘に泊まり、2日目は料理の美味しい剣澤小屋に泊まる。
どちらの小屋にも泊まれて、これはこれでかなり魅力的ですね😆
自分の好みでプランを立てればいいでしょう。
ただ、ひとつ言えるのは、剣沢でテント泊をするのはかなり大変だということ。
剣沢から見る雄大な剣岳の景色に憧れて、剣沢までテントを担いで行く人が多いですが、実際はかなり大変なことだということを伝えておきますね。
雷鳥沢から剣御前に登る雷鳥坂がテント泊登山の最大の難所です。
ここを乗り越える自信のある人は、剣沢でテント泊でも大丈夫です。
よ〜く考えましょうね🧐
【余談】ボチボチのんびりと登ろう
最後に余談ですが、結構重要なことので書いておきます。
一般登山道で最難関といわれる剣岳ですが、あまり気を張りすぎると疲れてしまいます。
疲れると集中力も切れやすくなり、事故のリスクも高くなります。
なので、
ボチボチとのんびりと登りましょう
ということです。
僕が剣岳に登った時は、60代くらいの穏やかなおじさん3人組とほぼ一緒のペースで歩いていました。
おじさん達とはもともと知り合いでもないし、一緒に登っていたわけでもありません。
休憩になるとたまたま一緒になり、その度に少しずつおしゃべりをしていました。
しかもそのペースで歩いていると、自然と疲れません。
なぜなのか。
よくよく考えてみると、おじさん達はゆっくりおしゃべりをしながら、いい意味でマイペースで登っていました。
ガツガツと登るわけでもなく、かといって後ろがつかえるほど遅くもなくといった感じです。
剣岳に登ると、この山の険しいイメージからか、大抵の人は厳しい表情をしながら登っていきます。
でも1秒を争うような瞬発力が必要な運動をしているわけではありません。
剣岳といえども、一歩一歩確実に歩を進めていくということには変わりません。
これから剣岳に初めてチャレンジしようと考えている人は、どうか気張らずにゆっくりと確実に登るようにしてみてください。
登り終えた人間からすると、決して難しい山ではありませんよ、と言いたいです。
まとめ
「登山が好きな人なら一度は登ってみたい、でも自分には無理かも」
と思われがちな剣岳に登るために知っておきたいことを解説してきました。
持ち物については、剣岳に登りたいならヘルメットとハーネスを用意しましょう。
ハーネスは必需品ではありませんが、どうしようか迷っているのなら絶対に持っていきましょう。
安心と保険が手に入ります。
登山ルートは、大きく分けて早月尾根ルートと別山尾根ルートの2つで、初めて剣岳に登るのなら別山尾根ルートがおすすめでした。
登る時期は、7月頃だと登山道に雪が残っていることが多いので、より安心に歩ける 8月〜9月頃がおすすめでした。
山行プランは、小屋泊とテント泊を組み合わせたハイブリッド型がおすすめでした。
そして最後にはボチボチとのんびりと登ることが、実は剣岳に登るコツだということもお伝えしました。
剣岳は簡単な山ではないけれど、決して難しい山でもありません。
これまでの登山であなたがコツコツと積み上げてきた経験と技術を存分に試すことができる格好の山です。
十分な準備をして、ぜひ楽しんできてくださいね!
登山保険の加入も忘れずに。
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